海水水槽のコケは照明で増える?LED設定を戻して約2週間観察|底砂の藻・栄養塩も考察

飼育記録・実験

以前、Red Sea ReefLED 50の照明設定を「設定8」から「設定9」に変更したところ、ガラス面の藻が徐々に目立たなくなりました。

そこで今回は、設定9から再び設定8へ戻したら、ガラス面の藻は再び増えるのかを約2週間観察しました。

結果は予想より複雑でした。

ガラス面では前回ほど藻が蓄積しなかった一方、底砂はかなり汚れ、観察途中ではマガキ貝の死亡とスターポリプの一時的な閉鎖も確認しました。

さらに、9月4日に一度清掃したガラス面を9月21日に再び拭き取ったところ、新しく形成された付着物も茶褐色でした。

今回の結果から、海水水槽のコケ・藻の増減は「照明が強いか弱いか」だけでは説明できず、栄養供給・場所・グレージング(藻食生物による摂食)などの収支で考える必要があると考えています。

なぜ照明を設定8へ戻したのか

前回の設定8では、シッタカ貝がガラス面の藻を食べていること自体は確認できました。

しかし、見た目では

藻の増殖速度 > シッタカ貝の摂食速度

となり、ガラス面全体としては藻が増えていきました。

その後、照明を設定9へ変更しました。

設定9では最大出力を大きく変えるのではなく、午後から出力を早めに落としています。ReefBeatの設定グラフから概算すると、Blueチャンネルの1日積算設定値は設定8より約27%低くなりました。

※これは設定グラフ上の「%-h」を概算した値で、PAR(Photosynthetically Active Radiation:光合成有効放射)やDLI(Daily Light Integral:日積算光量子量)の実測値ではありません。

設定9へ変更した後、ガラス面が徐々にきれいになったため、

「本当に照明条件が関係しているなら、設定8へ戻せば再び藻が増えるのではないか」

と考え、再現性を確認することにしました。

2026年9月3日夜、設定9から設定8へ戻した

9月3日の夜に設定9から設定8へ戻し、翌9月4日をDay1として観察しました。

9月12日と9月17日は写真を撮影できなかったため欠測です。定点写真として残っている最終日は9月16日(Day13)です。

Red Sea ReefLED 50を設定9から設定8へ戻した時点の海水水槽のガラス面
2026年9月3日。設定9から設定8へ戻した時点のガラス面。

ガラス面は前回ほど悪化しなかった

前回の結果から、設定8へ戻せばガラス面の藻も再び大きく増えると予想していました。

しかし実際には、細かな付着物は確認できるものの、前回のようにガラス面全体が明確に覆われていく変化は確認できませんでした。

照明設定8へ戻して13日後の海水水槽のガラス面
2026年9月16日(Day13)。設定8へ戻した後のガラス面。

撮影時刻、照明の色、ピントなどが完全に同一ではないため、写真から藻の面積を正確に定量することはできません。

そのため今回言えるのは、

「設定8へ戻しただけでは、前回と同じガラス面の藻増加は再現しなかった」

というところまでです。

一方、底砂はかなり汚れた

ガラス面とは対照的に、観察後半では底砂表面の付着物がかなり目立つようになりました。

照明設定8での観察後半に茶褐色の付着物が目立つようになった海水水槽の底砂
観察後半の底砂。表面の茶褐色〜緑がかった付着物が目立つ。

さらに、底砂周辺では緑色の球状付着物も確認しました。

海水水槽の底砂に現れたバブルアルジーを疑う緑色の球状付着物
2026年9月14日。外観上はバブルアルジーを疑う球状付着物。写真だけで種類を確定しているわけではありません。

つまり今回、

同じ水槽・同じ照明条件でも、ガラス面と底砂では付着物の増え方が大きく違った

ことになります。

これは「光量が増えれば水槽全体の藻が同じように増える」という単純な説明だけでは足りません。

観察途中でマガキ貝が死亡した

今回の観察では、途中で大きな交絡要因が入りました。

スターポリプが乗っているライブロックの下には、洞窟のような場所があります。その周辺にいたマガキ貝がほとんど動かなくなり、その後死亡していたと考えられます。

興味深かったのは、その時期と近いタイミングでスターポリプの開き方が変化したことです。

9月10日:まだ大きく開いていた

2026年9月10日に大きく開いている海水水槽のスターポリプ
2026年9月10日。スターポリプは広い範囲で開いている。

9月11日:閉じる部分が増えた

2026年9月11日に一部が閉じ始めた海水水槽のスターポリプ
2026年9月11日。前日と比べて開いていない部分が増えている。

9月16日:再びかなり開いた

一時的に閉じた後2026年9月16日に再び開いたスターポリプ
2026年9月16日。一時的に閉じていたスターポリプが再び開いてきた。

この時系列は興味深いものの、

「マガキ貝が死んだからスターポリプが閉じた」

とは断定できません。

その時点のアンモニア、酸素、DOC(Dissolved Organic Carbon:溶存有機炭素)などを局所測定していないためです。

ただし、生体が死亡すると組織の分解が進み、有機物や窒素・リンを含む成分が周囲へ戻ります。

今回のマガキ貝がスターポリプ直下の比較的狭い場所で動かなくなっていたことから、死亡個体周辺で一時的な局所環境の変化が起きた可能性は考えています。

腐敗臭が弱かったことは「全部溶けた証拠」ではない

死亡したと考えられるマガキ貝を回収した際、以前経験したような強烈な腐敗臭はありませんでした。

そのため、「かなり分解が進み、成分がすでに水槽へ拡散していたのではないか」とも考えました。

ただし、これは推測です。

臭いの強さは残っている組織量や分解状態などでも変わるため、

臭いが弱い=すでにすべて水槽へ溶出した

とは判断できません。。。

マガキ貝の死亡は「栄養供給」と「掃除能力低下」を同時に起こす可能性がある

ここで重要だと考えたのが、死亡による影響は一方向ではないことです。

マガキ貝が死亡すると、

① 死骸の分解によって藻や微生物が利用できる資源が増える可能性

に加えて、

② 底砂を食べたり動かしたりしていた生体が1匹減る

という変化が同時に起こります。

つまり底砂では、

藻が増える側の力が強くなる可能性と、
藻を減らす側の力が弱くなる可能性

が同時に生じます。

今回の底砂悪化を考えるうえでは、この組み合わせを無視できません。

では、なぜガラス面には前回ほど藻が残らなかったのか

ここが今回の一番面白い部分と思っています。

前回の設定8では、

藻の増殖速度 > シッタカ貝の摂食速度

に見えました。

今回は同じ設定8へ戻しています。

さらに、もし死亡したマガキ貝の分解によって一時的な栄養供給まで増えていたとすれば、

光 + 栄養供給

という、藻にとって有利そうな条件が重なっていた可能性があります。

それにもかかわらず、ガラス面には前回ほど藻が蓄積しませんでした。

ここで重要なのは、

ガラス面がきれいに見えることと、藻が増殖していないことは同じではない

という点です。

見えている藻の量は「増殖と除去の収支」

今回から私は、目に見える藻の量を次のように考えることにしました。

見えている藻の変化
      = 新しく増えた量− シッタカ貝などに食べられた量− 剥離・物理除去された量

これは厳密な数式ではなく、現象を整理するための考え方です。

ガラス面で藻がかなり生産されていても、それ以上の速度でシッタカ貝が食べれば、藻は蓄積しません。

一方、底砂ではマガキ貝が減ることで「除去する側」が弱くなれば、同じ水槽水に接していても付着物が残りやすくなります。

今回のガラス面と底砂の差は、

「どれだけ藻が増えたか」だけでなく、「どれだけ食べられたか」を考える必要がある

ことを示しているように思います。

「今回は違う種類の藻だったのでは?」を確認した

もう一つ考えたのが、

前回と今回はガラス面の付着藻の種類が違ったのではないか

という仮説です。

そこで、同じガラス面から付着物を採取して色を比較しました。

9月4日に一度清掃

設定8へ戻した翌日の9月4日、定点撮影には写らない場所のガラス面から白いスポンジで付着物を採取しました。

2026年9月4日に海水水槽のガラス面から白いスポンジで採取した茶褐色の付着物
2026年9月4日。黄褐色〜茶褐色主体の付着物。

設定8へ戻したのは前日の夜なので、この付着物が設定8で新たに一晩で増えたものではありません。

この採取によって、そのガラス面はいったんきれいになりました。

9月21日、同じ場所から再び採取すると「茶色」だった

9月21日、9月4日に清掃したのと同じガラス面からもう一度付着物を採取しました。

2026年9月21日に9月4日と同じガラス面から再採取した茶褐色の付着物
2026年9月21日。9月4日に清掃した同じガラス面から再採取。今回も茶褐色だった。

この場所は9月4日に一度清掃しているため、今回採れたものは基本的に9月4日以降に形成された付着物です。

結果は今回も茶褐色でした。

もし今回の回収物が明確な緑色になっていれば、

「前回とは異なる藻類群集へ変わったため、ガラス面への蓄積の仕方も変わった」

という仮説を強く考えるところでした。

しかし今回も茶褐色だったため、

「緑色系の別の藻へ大きく入れ替わったから結果が変わった」

という説明は弱くなりました。

ただし、茶色だから前回と同じ種類の藻とも言えません。

肉眼の色だけでは、珪藻を含めた藻類や微生物群集を同定できないからです。

茶色い付着物ならケイ酸塩も確認したい

茶褐色の付着物には珪藻が含まれる可能性があります。

珪藻であれば、NO3(Nitrate:硝酸塩)やPO4(Phosphate:リン酸塩)だけでなく、Si(Silicon:ケイ素)も増殖に関係します。

ただし今回の付着物を顕微鏡などで同定したわけではないため、

茶色=珪藻

とは判断しません。

今後、ケイ酸塩も実測して確認していく予定です。

今回の結果を一般化して考える

今回の結果は「私の水槽で設定8にしたらどうなった」というだけでは、他の水槽にはそのまま当てはまりません。

そこで、今回の現象をもう少し皆さんの水槽に当てはまるようにして考えます。

海水水槽で最終的に見える藻の量は、

光 × 栄養供給 × 藻の種類 × 水流 × 付着場所 × グレージング × 経過時間

の組み合わせで決まると考える方が自然なのかな、と思います。

そのため、

NO3・PO4が低いのに藻がある

ことも、

照明を以前の条件へ戻したのに、ガラス面の藻が大きく増えない

ことも、必ずしも矛盾ではないと思っています。

次は「底砂周辺の水」を測ってみる

今回、底砂側の変化が非常に大きかったため、次は水槽中央だけでなく、

  • 水槽中央の中層水
  • 底砂表面すぐ上の水
  • 底砂内部の間隙水

で、NO3、PO4、ケイ酸塩を比較する予定です。

もし水槽中央では低いのに、底砂直上や底砂内部だけ高ければ、

水槽全体の水質測定だけでは見えない局所的な栄養供給

が存在する可能性を考える材料になります。

逆に差がなければ、それも重要な結果です。

設定8を維持したまま、次はマガキ貝を1匹から4匹へ

底砂の汚れがかなり目立ったため、現在はマガキ貝を3匹追加し、合計4匹にしています。

ここで設定9へ戻すと、

照明を弱くしたから底砂が改善したのか、マガキ貝が増えたから改善したのか

を切り分けにくくなります。

そのため設定8は維持し、

底砂が悪化した環境条件をなるべく変えず、グレージング圧だけを1匹から4匹へ増やす

形で次の観察を続けています。

まとめ

設定9から設定8へ戻し、約2週間観察しました。

結果は、前回の設定8と同じにはなりませんでした。

ガラス面では前回ほど藻が蓄積しなかった一方、底砂では付着物がかなり増えました。

さらに観察途中でマガキ貝が死亡し、その時期と近いタイミングでスターポリプも一時的に閉じました。

死亡生体の分解による栄養供給が影響した可能性はありますが、その瞬間のアンモニアやPO4を測定していないため、原因とは断定しません。

また、9月4日に一度清掃したガラス面から9月21日に付着物を再採取したところ、今回も茶褐色でした。

そのため、

「今回は緑色系の別の藻へ変わったから、ガラス面に残らなかった」

という仮説は弱くなりました。

現時点では、

ガラス面の藻の増殖量そのものより、シッタカ貝による摂食を含めた「増殖と除去の収支」が前回とは変化していた可能性

を重視しています。

今回の観察だけで、

「設定8が藻を増やした」

とは結論できません。

むしろ今回見えてきたのは、

同じ水槽でも、ガラス面と底砂では、光・栄養・グレージングへの反応が同じとは限らない

ということでした。

次は底砂周辺の栄養塩を実際に測り、さらに設定8を固定したままマガキ貝を増やしたとき、底砂がどの程度回復するのかを観察します。

ここから推論|信じるかどうかは読者次第

ここからは、今回の観察結果をつなぎ合わせた私なりの推論です。

測定によって証明できたことではありませんが、現時点では次の流れが今回の現象を比較的うまく説明できると考えています。

まず、設定8へ戻したことで、前回と同じように藻が増殖しやすい光条件になった可能性があります。さらに観察途中でマガキ貝が死亡しました。

死亡した生体は分解される過程で、有機物や窒素・リンを含む成分を周囲へ戻します。そのため今回は、「設定8による光」+「死亡したマガキ貝由来の一時的な栄養供給」が重なり、藻が増えやすい条件になったのではないかと考えています。

ところが、ガラス面には前回ほど藻が蓄積しませんでした。

9月21日に、9月4日に一度清掃した同じガラス面から付着物を再採取すると、今回も茶褐色の付着物が確認できました。つまり、ガラス面でも藻・付着物そのものは形成されていたと考えられます。

それでも大量に残らなかった理由として、私は**シッタカ貝によるグレージング(藻食生物による摂食)**を疑っています。ガラス面では「藻の増殖速度 ≦ シッタカ貝の摂食速度」となり、増えた分が食べられていたのではないか。

一方、底砂ではマガキ貝が死亡したことで「死骸由来の栄養供給が増える可能性」と同時に「底砂を食べたり動かしたりする力が弱くなる」という二つの変化が起きた可能性があります。結果

「ガラス面では藻が増えてもシッタカ貝に食べられ、底砂では付着物が増えやすい状態になった」

のではないかと考えています。さらに、死亡したと考えられるマガキ貝がいた場所はスターポリプのすぐ下でした。その後、スターポリプが一時的に閉じたことから、死亡個体周辺で起きた局所的な水質変化が影響した可能性もあります。

ただし、その時点のアンモニアや酸素、PO4(Phosphate:リン酸塩)などを測定していないため、ここは推論の範囲を出ません。

今回の観察から私が最も重要だと感じたのは、

藻が増える条件だけでは、実際にどこが汚れるかは決まらない

ということです。

藻の見た目は、

増える力と、食べられたり除去されたりする力の差

によって変わる。

現時点では、これが今回のガラス面と底砂の違いを最も自然に説明できる仮説だと考えています。

次は、底砂直上や底砂内部の栄養塩を測定し、さらに設定8を維持したままマガキ貝を増やしたことで底砂が回復するかを確認します。

もし底砂が明らかに改善すれば、今回の仮説をもう一歩検証できそうです。

信じるかどうかは読者次第。
私は、今のところこう考えています。

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